あなたは「した」と云ひ

あなたは「しなかった」と云ひ

向かうのお山に雲がむくむくと出て来た

あなたは「したかった」と云ひ

あなたは「したくなかった」と云ひ

向かうのお山の雲はさらに高く空に積み上がった


危ないゾと思ふ

そろそろ崩れて来て

雨模様になるかも知れない

こんなに晴れているのに

「した」とか「しない」とか

「したかった」とか「したかったのに」とか

いろいろ入り乱れてややこしい


向かうの山の雲がむくむくと高いうちに

さあ

思い切って

ジャンプする

手に手を取ってあなたを寐にゆかう

「した」と云ひ「しない」と云ひ

悩ましい

僕は、乃至ないしは、私たちは

原爆なんか落としたくなかったのに

手に手取って寐に行く

雲がとうとう1万㌔も背伸びして

ついに雨になった

真っ白な雲が紫色になったり

赤く染まったりして

破れた皮膚や炭になった骨によく沁み入るよ


しかし今となってはほんたうは

あのお山の上に湧くあの真っ白な雲が懐かしい


倉石智證