もし世界がズレてでもしたら困るだらう

風景が視覚にズレて

鳥たちはあちこちで壁や空気にぶつかるだらう

蝶や虫たちが色に驚き風に舞う

しかし、風が戦ぐと自分の存在に驚くに違いない

しかし、どうして空にこんなに鳥が生まれて来るのか知らない

高く飛ぶものは遠い視点を得る

風景ががしゃがしゃして

緑のそよ風

あゝ、鳥たちがまたあんなに鳴いてゐる

いったい何が足りないと云ふのだらう

1980有本利夫「厳格なカノン」

 

まるで気まぐれな話だ

壁の前の黒い翳

立ち去ったと思ったらもう戻ってきている

梯子をかける

鳥や虫たちが見てゐると思っているものを

世界も見ているはずのものを僕も見てゐる

彼たちはそんな風景をみんな描き留めやうとする

まったく面白い連中だ

まったく愉快なものさわぎだ

 

倉石智證