地をそっと踏み歩いてゆくものがゐる

柿若葉の下

足音を忍ばせて家の周りを歩く

すべて運命にからめとられ

あやうい

電線に留まった鳥たちはしきりに首を動かし

次の一瞬

方角無き向かうに飛び立ってゆく


地のモノはまだ天のモノを知らず

それだからおずおずと柿若葉の下を

そんなにもあえかな色合いのもと

運命とは云へ心細げに

今、李の顆粒を摘果して来たばかりだと云ふに

ほろほろと地に落ちる

それを空にあるものたちが見つめていないと云ふこともあるまい


あんまりに毎日に芽を伸ばしてゆくものだから

色を濃くしてゆくものだから

驚きについ

あたふたと

もうじき韮に白い花のレースに咲き乱れ

モンシロチョウがあちこちに生まれ

だからひとは屋敷にゐてひっそりと目を覚ますと

まず畑に下りて

確かめずにはゐられない


柿若葉の下を行く

地を割って次々と生まれて来るものにゐざり

皺ぶいた老人の堅固な手で引っ掻き

かうして生まれてきてしまったものたちに

こもごも

自分も含めて

生命を消やしてやるのだ

まるで永遠に続く審級のやうに


倉石智證

草引き女とも云ふ。

まるで宿命ででもあるかのやうに、雑草たちと固い縁で結ばれてゐる。

彼女が行く先々に、次へと生まれて来る雑草たちも、一瞬身構えるかのやうだ。

引き抜かれ、土に齧られた雑草は、天日に晒され、すぐに息絶える。