じつに春は一年でもっとも美しい季節である。
子供や若者は春に感じ入らない。
春に花が咲くのはあたりまえだと感じる。
然(さ)るべし。
自分自身がすっぽりと春の中にいるのである。
春が自分の内から去ってはじめて、人は感じ入ることができる。
かかる小さきものに感じ入ることができる。
「ああ、春がまた来た」。
多くのものを失ってからこそ、命があってこそ、春の再訪を信じることができる。
「ビッグパレット」福島避難所
「イヌフグリ春があったとおさな云ひ」
たとへば私の恩師東助先生のお孫さんがまだ学校に上がる前、
おじいちゃんの先生と田圃に出かけた折にイヌフグリを見つけて指を指し、
「あった、あった」と先生をせかしたと云ふ。
大人たちさへもしかし、時に子供たちに小さきものの小さき春を教えられるのだ。
イヌフグリと云へば――――、
「おおいぬのふぐりヴェロニカそのむかしキリストの汗拭ひしままに」
ヴェロニカ・ペルシカ(veronica persica)──
その昔、十字架を背負いカルヴァリ丘を歩かれているイエス様を見て思わずかけ寄り、
額の汗をぬぐってさしあげたという。
和名オオイヌノフグリはなんとものどかでひょうきんな名前であるが
学名はゴマノハグサ科のヴェロニカ・ペルシカという。
定かではないが、気がついたら明治時代半ばには、
この花が当たり前のやうに咲いていた、ということのようである。
清楚な、でも温かみのある青さである。
ペルシカはペルシャのという意味らしい。
ペルシャンブルー・・・。
「キリストの汗ヴェロニカを青にせしかかる小さき春の報せを」
南(みんなみ)や西の方から春はこの列島を大急ぎで駆け上って来る。
列島の西の方の人たちは皆こぞって暖かい風を北の陸奥に送り届けやうと祈り始める。
そしてこのお方は――――
「手話でする皇后陛下「ガンバロー」バスの中から両の拳を」
ご訪問を終えられてからバスの中へ。
見送る方々へバスの中から両の拳を上下に振られるように何度も突き出された。
口は「ガンバロー」と仰られているようだった。
連体とは「痛み」「思いやり」「見守り」「声かけ」などの共通体験。
ゴルフの石川遼くんも今期の賞金を全額寄付すると、
「ずっと、自分で何ができるかと考えていた」と。
「ネギ、レタス、安いよ安いよいらっしゃい栃木県産放射能外」
風評に負けじと半値で売りだした。
「石巻工業高校米兵の復興作業頼もしきかな」
高校生にまじって迷彩服を着た50人の屈強な兵士たちが体育館の泥を片づけ始めた。
「復興に立ち向かう姿、その精神に深い感銘を受けた。
必ず立ち直ると確信している」と中尉。
「うれしい。この体育館で入学式をした。後輩たちのためにもきれいにする」3年生か。
「どのように友情の手を差し伸べることができるか話し合おう」(ロスアンジェルス市長)
「決して一人ではないことを伝えたい」(米赤十字会長女性)
「この国難はひとりでは立ち向かえない。アメリカの友情や市音に感謝する」
(藤崎駐米大使)
「宅急便「届ける」「笑う」「希望」湧く。ライフラインの命若者」
繁忙期並みの量ですね。笑顔が見れてうれしいです。
ヤマト運輸の宅急便は泥の跳ねをいっぱいかぶって。
何とか今までの平穏な生活に少しでも近づきたい。
荷物が関西から届けられた主婦は段ボール箱を開けながら、
カップめんなんか手に入らないですからと笑顔がはじけた。
「青空や垂井に鯉の昇り立ち」
鯉幟や幟が垂井の町にいつもより早く風に青空になびいた。
元気になれ、様々なメッセージが鯉幟や幟に書かれている。
岐阜県垂井。
梅の花が咲き、柳が河原に芽吹き、土筆の子が土に顔を出す。
古い日本では(古今集)
「色よりも香こそあはれとおもほゆれ誰か袖ふれし宿の梅そも」
猫柳が芽吹いた。
「日は昇る廃墟にかかるねこやなぎただ人々のましますものを」
つらい現実が続き、
「つくしんぼプルトニウムに押し黙る」
プルトニウムがついに出てきちゃった。
土壌汚染はどの程度深刻なのか。
「身を削る削られる思ひ原乳の排路に流るどなどなどうな」
茨城県小美玉市酪農農家。
「いわきには蛸うちあげられて蛸の夢」
通常は今から蛸の本格的な漁なのに。
蛸が瓦礫の間に挟まってそのままお陀仏している。
夢かと思ってもやはり現実なんだものね。
蛸の夢・・・というものもあった。
「町民は一つの家族離れない離れたくない加須の転居に」
スーパーアリーナから今日、加須市の空きの高校の校舎に。
畳が敷かれて、カーテンも付けられた。
自治体の機能もそっくり引っ越す。
今日は同じ福島県の大熊町も会津の方に町ごと引っ越した。
■東日本大震災では多くの学校が避難所として使われた
=2011年5月、宮城県気仙沼市
2011,3,29日経
(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とベルリン国立歌劇場管弦楽団の共演)
スター指揮者のサイモン・ラトル氏とダニエル・バレンボイム氏の2人は
公演収入を寄付しようとドイツ語で呼びかけた。
「日本を助けるため、友人と誘い合ってチケットを買ってほしい」
「なにもしなければ自分たちの未来も暗くなる」。
ドイツで日本への思いやりと同情心が大きく盛り上がった瞬間だった。
ゼピュロス(西風)が花々を送り届けやうと、
あちこちに湧き上がり来る。
2011,10,3「花に願いを」
津波の被害に遭った宮城県七ケ浜町の菖蒲田浜。
海水浴場を元の姿に戻そうと、手作りの花壇に町花のハマギクを植えていく。
「逆境に立ち向かう」が花言葉。


