聞く耳を持てよと耳を澄ませば
世界は痛い
間違って犬の糞を踏んづけちまった
ワール、そんな季節の不実の中を
ぬかるんで
今帰って来たばかりだ
こんなにも周囲が密集したら逃げ出すしかないぢゃあないか
おまへさんは今すぐにでも変哲な眠りをば差し出せ
だから律儀に周縁を歩く
1949高山良策「東宝争議」(1948)工場や群衆や軍隊や権力が重なってゐる。
きまりの悪さ
聞く耳を持てよと今では世間が痛い
こんなことでもと話をてんこ盛りに持ってくる
座って話せばいいものを立ち話で
待てよ、世界も世間も痛いのに
鳩が飛んだ
あゝ、どうでもいいことばかりが詰め詰めになってわたしのまへを塞ぐ
トムスンは保証したわけではない世界の平和を
それだからみるみる地は削られて
そこでは別な旗が立てられた
止めなさいよ国色くにいろなんて
いっそ土色に
一層木の色に
いっそ空の色に、血の色に
うすうすは知っていたんだけれど世界が痛い痛いのは
私も聞いてはいたんだけれど世間の痛い痛いのは
折角だから村の入り口では村に入る前にサイレンを消す
鳩たちは鳩小屋に入ってくくくーくくくーって
あれはどうにも不思議な惑い
まあ、でも兵士に行かないだけでも幸せだね
2015,2/11ウクライナ東部
すぐに声を掛ければしかし不実が蒼褪める
行けよと云ふ声がすぐに後ろに引っ張られて
横殴りに来る風が僕らの頬をひしゃぐ
やだねへどこまで行っても結論も出ない
矩形の眠り
階段の形の眠り
変哲の眠りにはでもつくづくと飽きて
あゝせめて子供たちだけは温かいお布団で寝かせてあげたい
世界に在るのはもうほんたうに痛い痛いばかりで
教会やモスルにさへも祈りが立ち止まる
もう今夜の塒ねぐらとてない
「おっかあ、もっと早く歩きなさいよ」
「そんなこと云ったってお前、わたしゃもう草臥れたよ」
・・・・・。
(17,7,4日経)
ヌーリ・モスクの敷地には、「人間の盾」にされた住民が次々避難してきた
=2日午後、杉本康弘撮影
倉石智證


