■久里洋二さん「鉛筆の家」

どことなく革命の匂い、とてもシュールでアナーキーな感じがする。

 

ペンシルが涙を零す

あゝ、つらい

あゝ、つらい

ペンシルの涙の純情

ペンシルを上に立て

ペンシルのお城

あゝ、ずいぶんと人間らしく伸びたなあ

 

だれも手に届かない

何を描いたのか忘れた

描き出すたびに少しずつ削られて

ペンシルの先から何かが描かれて

夢を描き出せば描き出すほど

誰もそれを知らない

 

さびしい街の村はずれ

ぽつねんと立たされて

だれかの拍手喝さいを待つ

ペンシルの涙の純情

とても考えすぎて

おーいと声をかける

首を傾げざるを得ない

ペンシルは涙を零す

 

───あゝ、これは戦争前なのだ

母さんは戦場の息子に手紙を書く

 

倉石智證