足に安住してゐるものは次々と出て来るべきだ

腕は抱擁する

塀に囲われた彼と彼女に赤ん坊が生まれ

はちきれんばかりの笑顔が溢れる

通りすがりの人は「神様のご加護を」と

薄暗がりで見たのは多分あの人だったのだらう

(17,7,4日経)ヌーリ・モスクの敷地には、

「人間の盾」にされた住民が次々避難してきた=2日午後、杉本康弘撮影

 

手はすぐ顔の近くにあり

慰める

無数の墓が丘陵に続く

疲れ切った足は泥濘に行き悩み

あそこで1ペンスを

兵隊は背嚢を下ろす

蹲るばかりだ

巨大な齟齬がマンハッタンを超えて

グッドモーニングベトナム

銃口が哀しい陰阜いんぷを慰める

1965,9川を泳いで逃げる二組の家族(ヴェトナム戦争)

 

足は手に手は足に重なり

顔は遁走する戦慄の中で河を渡り

返してよフィルムを

焼け付くばかりの真実を

無人機が音もなくやって来る

祈ることはいいことよ

ベールの彼女は優しく微笑む

永遠に次の瞬間

爆ぜる弾幕の音のことは

彼女は聞いてゐない

足は無数の雑踏の中へと流れ消えて行った

 

倉石智證