妻が眠ると夜はわたしの恣ほしいままになる

償ひは多分朝になる

それなんかでもほんたうのところ

ちゃんと目覚めるのかどうか心配だ


夜のペレアスとメリザンド

ネズミは梁に休んでゐる。

「ああ、星が落ちてくる!」

「私の上にも!」

「どこへ行くの?」

「わからない。私も迷った」

と云ふ具合になるのだ


義母はいつも見てゐる

わたしが畑の隅で雑枝を積んで燃やすのを

烟のたなびく方に目を凝らす

あそこではかすかに昼と夜とが逆転する

優しい声をかけないわけにはいかない

そして、妻が目覚めるときに

ようやくわたしは床に就き

激しく安堵する

ば様は未だ畑にゐるんだらうか

読み止しの本がページをしどけなく開いたまま

妻の額のすぐ傍らに落ちてゐる


倉石智證