涙が出るとき心はどこに
胸に手を当て考える
うれしいときは心はどこに
心はあなたに置いて来た
欠伸が出るとき心はどこに
心はあそこ上うわの空に
悲しいときは心はどこに
水に流して忘れませう
正午には鳥も午睡する
もう大丈夫、お眠りなさい
ゆるくやさしくぼんやりと
ゆるくやさしくぼんやりと
かみあわないむかわさんは
恋するために生まれた
ぷかぷかぷかと桃色の雲に乗って
窓をお開きなさい
さうして呼び入れる
部屋に漂わせたまゝに
ずいぶんと昔
読んだ記憶がある
お入りなさいどうぞ
おかえりなさいほんとうに
かむあわないむかわさんと
壁と部屋との間の空を
いまかいまかと見上げてゐる
ゆるくやさしくぼんやりと
そのほそい切れはしのやうな空を見上げ
涙が出るときは心はどこに
うれしいときは心はどこに
おおいそぎで川に行って
橋の上からぽたぽたと
もう用のない言葉をいくつも流した
倉石智證