御名御璽ぎょめいぎょじ
赤い篆刻てんこくがあのやうな立派な雲に
そしてなにもかもパーになった
そしていつまでもいつまでも薄い目に見えないほどの塵が
降り続くのでした
信仰は少しも役に立たない
歌を唄うのです
腹を切るのは痛いですから
「モトエ ! 」
まだ長いこと亡霊が生きているのですね
わたしは私ではありませんから
わたしがすることは今から私のことではありません
そして、わたしはあなたに入れ替わる
影のやうに入れ替わってあなたは斃れる
生まれた時からわたしの子ではなかったのだから
初めからゐないと思って
ワダスは
海の水脈の果てるところ
船の墓標の鎮まるところ
兵隊さんたちは帽を目深に鉄砲を担いで
長い隊列が沈黙のまま
海の上を幻のやうにわたって行くのでした
倉石智證