8月は7月のたまもの

らくらくと越えて行く

クジラの海

蝶の谷

鳥たちの空

新井良二「いつもこんな感じですよ、でもそれより」

 

少女たちは校門の前に立ち

たるみきった北回帰線は嫌いだ

腕と胸の間に陽に灼けた夏を抱える

小麦色を我慢しきっていた

眼をキラキラさせて

弾ける水に汗に笑い声に

プールサイドで

夢とアイスクリームと時間を食べる

 

月のたまもの

星々のたまもの

太陽のお日様のたまもの

少女たちはカニの横歩きを笑ふが

ある月夜の晩に一斉にカニ達は海に入り

躰を上下にダンスして

何万と云ふ卵を海のやはらかき褥に放出する

ウミガメの砂交じりの涙

星々と魚たちもそれらを見ている

 

地の運行の間にまに

星々を次の夜にしまい込んで

夏の朝は幽暗に明けはじめ

鳥たちは屋根に電線に空に

朝の賛歌に喧しい

いつもの朝、8月は7月のたまものになる

さあ、そしてわたくしは今に

わたくしをして山を登り、雲を出でて

恐ろしいほどの感動に会いにゆく

 

倉石智證