またいつかどこかで会おうね、

と死んだおふくろに声をかける

必ずあの頃は林檎の木の下にゐて

林檎に袋をかけてゐたりする


目をつむると笑い顔しか浮かんでこないのはどうしてだらう

やがて、わたしも行く

それがとても不思議でならない


おふくろが死んだのはもう何十年も昔のことだが

それの面影がふっと浮かんで

またいつかどこかで会おうね、

と声をかける


さみしげに冷たく微笑む

生きているときは冷淡で無関心だったわたしは

それでもあのおふくろの甘酸っぱい思ひに会ひたいと思ふ

きっと通りすがりの雑踏のすぐそこでも会えると思ふ


倉石智證