花のことを伝へなければいけない
鳥のことも伝へなければいけない
流れる雲のことも伝へなければいけない
風のことはそのあとで
諍いと齟齬が続いて
愛が失はれ
子供たちが取り残され途方に暮れる
花の四時を巡る静けさを伝へなければいけない
鳥の巣のことばかりではなく
空を飛ぶ鳥のことを伝へなければいけない
雲のことは、雲はあんなにも自由だ
そして風のことは
風は何度も何度も吹いて
しかし、人々の生活は決して変わることはなかった
花の周りにはたくさんの虫たちがやって来る
虫たちは花になにか知らせを持ってやって来る
鳥はしかしいつでも飛び立てるが
小鳥たちはいつでもあの狡猾な蛇に狙われてゐる
雲はある詩人が云ったやうに
やっぱりいいなぁ
でもすぐに黒雲が湧きたちひどい嵐も連れて来る
後悔や、やわらかい断絶や
鋭利な遮断、接近拒否や弾薬まである
風よ、風よ伝えてよ
ただプロペラを回すだけではなく
雲を流し,鳥たちの羽根に力を与えるだけではなく
花にそよ風を、香りを届けるだけではなく
俯瞰すれば、あゝあそこに一本の木がある
思い立ったらすぐにでも
諍いや、戦いは止めて
(それはすぐにでも止めることができるのだ)
花も鳥も雲もそのことは知ってゐて
木はまるで哲学者のやうだ
みんなそのことは知ってゐて───
「私たちはすっかり忘れているのだ。
むかし、私たちは木だったのだ。」
(長田弘「むかし、私たちは」より)
その木の中に私がゐる
私たちがいる
何世紀も前の
木々の枝枝の中にも
倉石智證