或る夜にぱちッと眼がさめる

ここはどこだらうと考える

深い深いところから声が届く

わたしは誰だらうと考える

半身を起こして見る

暗闇の遠ーい視えない奥を凝視してみる

手の平で腕を触ってみる

わたしは、私だ

1922~23村山知義「サディスティッシュな空間」

 

耳に手を当て、遠ーい彼方を聞いて見る

すると。

ぽちッと遠い何か懐かしい景色に

ぽっ、ぽっと灯りが点る

 

おいでなさい

わたしと私の大勢が動き出す

おいでなさい

今度は教室だ

わたくしの大勢がぞろぞろ教室に入ってゆく

なんとも不揃いな凸凹したわたしと私の大勢だ

 

山の麓はさみしくて

先生の実験着はやけに白っぽく

ゐるのかゐないのか

おいでなさい

ぐー、ちょき、ぱー

あんたらの負けだ

息の音や、息の根や

 

或る夜にぱちッと眼がさめる

叱られて

故郷はいかにもさみしくて

村外れて

ひとりぽっちに

そんな時には

或る夜が、ぽちッと眼を覚ます

 

倉石智證