食べて

私の身体を端から端まで

それで消えてしまうならこの焦燥感が

翳のやうに私の背に張り付いて

蜘蛛の糸が

私が動くと一緒に動く

 

戸口を占領しないでロングバケーション

それを新しい不在証明に

冷たいわ手の感触

あなたがゐないのだからしょうがない

せめてそこから出てゆく

1952金山康喜「アイロンのある静物」

 

               「持たざる者」の目的語は何なのか、

               ずっと考えている。

               (金原ひとみ著「持たざる者」15,6/7日経書評、東直子)

 

私は持ってゐない身体の中にも

手の平にも

少なくとも暗闇を食べて生きてゐる人たち

異界のすぐそばで

すぐに消えてしまうわ

私なら正直に食べられてそしてお菓子のやうに

気持ちいいも一緒に食べられて

最後に、

だから、

涙だけがぽつんと

皺くちゃな紙の上に残る

 

倉石智證

私は或る日、生きることの課題を与えられて、

中央高速を一生懸命走ってゐる。

不図、モーツアルトをかける。

それは退屈を感じたからばかりではなかった。