水の水位は私の水位ではないからと
バスタブの水位を後ろ髪惹かれる思ひで見ながら
公園に出たら
老人ばかりが推歩してゐる
私はすぐに私たちで
花を見たり、虫(蝶も含む)を探したり
そして鳥の声も聞いたりする
トイレの水を流しでもしたら
バスタブの水位も減るのではないかと
ここに居ても内心気が気でない
虫が轢かれでもして
体液がアスファルトに流れ出てゐても
我ことのやうに心が痛む
最近のことだがわたしは妙に干からびて来たが
私の水位とももはや無関係ではゐられないのだ
あながち、ビールばかりの所為でもあるまい
あながち、夜の夜中のひん尿の所為でもあるまい
思ふに老人たちの水位は上がってゐる
干からびるに従って
水位はみるみる上がり
涙もろく悲しいがあるとすぐに涙を顔にこぼす
あゝ、躰の中で水位が上がり
時々かうしてダムが決壊する
なんと云ふことだ
いつも瞼のすぐ下にまで水位が上がり来ていて
眩しげに地衣と地上を眺むる
赤ん坊は特に歓喜だ
しかし、あの水位にはとてもかなわない
なにしろたった、水から出て来たばかりなのだから
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水に生まれ
水に還るだらう
倉石智證