H氏

朝は健やかに、真新しく

水滴の付いたトマトで

どですかでん


H氏は畑にゐる

カンカン帽は頭に

鍬に顎をのせて考えてゐる風

長いふとした思索の間に

黙っていても葡萄の蔓は3センチも伸びた


あやういな、H氏

孤立無援だ。

防塁が次第に狭められ

あらゆる植物が今生育してゐる


朝は健やかに、真新しく

知らぬ間にあらゆる植生が足元に忍び寄り

夢のなかにまで

脚にからみつき

心地よいほどに喉元まで這いあがって来る


あやういな。

H氏。

カンカン帽が落ちる

なにをしてゐるんだらう


倉石智證