朝は物思はせ顔にやってくる
目を閉じる顔の上に浮かび
ひそやかに囁く
まるでどちらかでもいいやうにと
指を立て、それを一つずつ折りたてゝゆく
あなたはゆっくりと目覚め
白いベールと薄物を身に付け
いそいそと朝は冷たき水を汲みにゆく
古いページはここに置いて行きませう
着古した上着はここに
新しいのでもって出かけませう
このリンゴは幸せかしら
二つ目も地面に落とした
さやうならって、生きてねって
それから袋をかける
やがてまた袋を外すころ
丸々と実って秋口には色づき始める
さよう、あなたは梯子に上り摘果するたびに
あなたの爪は後悔と不実で黒ずんでくる
どんなに云ひ訳しても
今は新しい爪で不用のものを摘果する
地に落ちてゆくものも枝に留まるものも
幸せになるのを願うばかりだ
カッコーが今朝も啼いて
朝は掘り抜きの井戸に水を見にゆく
空が青く映り
つい庭先にはヒルザキツキミソウがピンクに揺れる
ようやくすべてが目覚めてくる
倉石智證


