■久里洋二さん「ザグレブの苺」

ヨーロッパのザグレブの広場で苺を売っていた。

色は美しいが味が心配だ。


ザグレブのイチゴ、

ザグレブの苺、

可愛さうだよ

手にとって遊ぼうよ

すぐに人間の顔のやうに恥ずかしがって真赤になる

酸っぱいが甘くなるんだよ

 

よく晴れた日には海の青がよく似合ふ

たくさんの諍いやとんでもない戦争があったものだから

鉄条網があって

潜れないどころか衣服が破れた

女の子たちはどんどん孕まされたものだから

可愛そうだよ

 

その苺、

広場で、

酸っぱいがすぐに甘くなる

たちまち砕け散って

ザグレブの苺

だからザグレブの苺は可愛い顔をして空を飛ぶ

鳩が舞い降りて来て

たちまち、啄む

 

倉石智證

zagreb

1991,9/22

ユーゴスラビア連邦軍(実質セルビア軍)がザグレブを襲撃するに及び、

クロアチアとセルビアの戦闘に発展。

紛争の本格化が始まった。

レイプ、両民族による“民族浄化”が繰り返される。

 

ユーゴスラビアのベオグラードに在住の詩人、

山崎佳代子さんの「鳥のために」という詩集。

ユーゴは当時、悲劇的な流血を繰り返しながら解体して行った。

山崎さんの言葉を借りれば、町々を分断した国境は「傷」であり、

その「傷」が人間同士の信頼関係をズタズタにしてしまったのである。