そして、花を見て

急にさびしくなるのです

野に山に有情が溢れかえって

人々が列を組んで菜の花畑の間を行きます

やがて山のあわひを

花に見え隠れしながら

こもごもに呟き交わし

人生の思ひ出に記憶をおちこちに拾いひろいしながら

山のてっぺんへと上り詰めてゆくのです

 

さくらさくらさくら、連翹れんぎょう

桜桜桜、木瓜ぼけ、白木蓮

ことに桜は青空に泡だちみなぎり

あまりの元気に老人たちはすぐに花疲れし

花の下のベンチに

並んで腰を下ろす

一体全体どうしたと云ふことでせう

みんな手に手を取って手を開き

千の手の指が万の手の指に開き万歳をして

頭を四囲に彷徨わせ

遠山をのぞみ茫然とします

 

いくつもの出会いがあって

別れがあって

幾組もの出会いがあって

そして離れ離れになって

だから、人間は根本に於いてさみしいのです

子羊が啼くのはさみしいからではありませんから

人間だけが、さみしいのですから

そして、万の手の平を空に翳し笑ふ

ベンチに腰を下ろしお団子を食べ缶ビールをのむのですから

あれが吾妻連峰だよ、白い雪を乗せてきらきらと

 

そして両陛下もペリリューからお帰りになりましたね

私たちの無数の足裏あうらも花吹雪を踏んでゆきます

わたしたちは根本においてみなさびしいものですから

かうして大勢で徒党を組んで

しかし、東北縦貫道にのって那須を通り過ぎるころ

山笑ふ

いたるところ芽吹いて

全山がもこもこと

あゝ、今度は山が笑ってゐました

 

三春、玄侑さんちのお寺

 

三春の滝桜