桜が咲いた

いちご大福が食べたいな

まな裏に滲むこの心地よい桃色

日はあたたかく涅槃西風ねはんにしが吹くよ

花叢の奥に雀がチュンチュン


孫の手、孫の手

両手を捧げて宙に花片を手招く

学校の庭の方に光りは糸を曳いて流れて

甍に冷たく今年も散りかかる桜の

石の上、階きざはしに腰を下ろす媼の

たやすく景色のなかに溶け込む


坊さんが出て来て今年も甘茶の用意をする

どことなく涅槃西風が吹いて

唯我独尊

あゝ、小さき子の花片を追いかけて

雀は花叢の奥に

今年も桜が咲いたよ

いちご大福が食べたいな


倉石智證