モアイのやうに意味不明で

ただ海に向かって眺めてゐたい

意味を問いかけたことなど一度としてない

ただ濃い影のやうに存在してゐたい

そして、手を伸ばせばすぐのところに

実態としての空気が漂ふ


モアイはもはや桃色に染まりたいのだよ

それはまるでわたしの叱呼のやうに

なかながと

あゝ、春霞がたなびいて

西南西の方角から

確かに青緑色の海が泡立ち

確かに或るもの頭が攻め上がって来る

日本列島ぢゅうがあわだつのだよ


えー、鰹はいらんかねへ

初鰹はいらんかねへ


自分は一歩も微動だにしないのに

季節が押し寄せてくる

ぼくを桃色に染めて

ぼくは丘に上って

その内にぼくは真緑に染まって

あっと云ふまに

向かうの方に過ぎてゆく


けふ

モアイのやうにただ黙って

濃い影のみで

それこそずっと四季が穿つほどにどっしりと

だいたいモアイには脚があるのか

叱呼の切れの悪いのは人の所為にしない

一歩も微動だにせず

桃色に染まりたいのだよ

あゝ、春霞がたなびいて


倉石智證