すでにあれば

すでに、あらむ

よきことの

陽の光に

産毛射す

陽の光に

杳としてきのうけふの

忘れなまし

忘れなましものを

道筋に出でて来る

春の光りの

さきわいの

天に伸び

語らず

語らずとも

ただそこに、ありて

しるし

みどり為す

ほめき、おめく

緑の炎ほむら


否、とは云はず

ね、とも云はず

あれはモクレンの蕾

硬く、産毛射す銀の色に

繁縷はこべらがみどり為し

あはれ、あはれ樹液の

らせんに昇る

手の先の、手と手をつなぎ

マチスの絵

踊るよ

樹液の滴らす

樹液は巡り

何処へとなく

そこへ

さき芽の芽が出る

みどりの炎

春の息吹の、階きざはし

兆し、

きざす。


倉石智證