■1920クレー「リズミカルな森のらくだ」


六つを足して五つを引きます

ひと瘤らくだが深い森の奥の方にゐて

蒼い月を見上げてため息をつく

眼に涙をためていまにもなんだか泣きそうで

可哀そうだ

七つを足しして五つを引きます

ふた瘤らくだは広い砂漠にゐて

幾重にも重なる砂丘のうえに上って

銀色の月を見上げて嬉しさうだ

今にもなんだか歌い出しさうだ


出ておいでなさい

井戸はみんなのもので

仲良くしましょう


オマーシャリフが砂漠の陽炎の向うからラクダに乗って

黒装束に顔を隠し

パーンんと───

井戸の傍らに使用人が倒れ込みます

碧い眼をしたロレンスはアラブの白装束の衣装に

裾ひるがえしラクダに跨って

「アカバへ」

蛮刀を頭上に振りあげて叫びます


一つ足す一つはふた瘤らくだ

二つ引く一つはひと瘤らくだ

√4はふた瘤らくだ

みんな仲良くしましょ

実は森の奥には森のらくだ達がいっぱいゐて

だく足を踏んでおかしなリズミカルな森のらくだたち

月の砂漠のらくだ達はみんな長い首をかさねるやうにして

砂丘の影に眠り

眼を閉じてときたま口だけを動かす


そのとき蒼いお月さまと銀色のお月さまが重なります

「人間よ、もう止せ、こんな事は」

戦いはいやだからもうみんな出てらっしゃいよ

井戸はみんなのものです

仲良くしましょう


倉石智證