耳寄りな話があると云ふから

ぐーっと近づいて行ったら

ますます不思議な形だなぁ

夢の形のやうで夢の形をかうやって触る

舐めてもいいかいとぺろりとしたら

げらげら笑い出して止まらなくなった

きっと向かうの世界から来たんだ


白い帆を浮かべ航海に出やうとする

艀を叩く眠くなるやうな水の音

一緒に行かうかと誘うと

耳の形だけがついて来た

もう笑うどころか真剣で

その耳たぶの辺りだけがぽーっと薄桃色に色を射して

耳寄りな話ってばここだけの話だから

それはぼくとおまへだけの話で

きっと、お母さんには内緒で

そして、それから僕たちはその桟橋から

長い見知らぬ航海へと旅立った


倉石智證

ジャン・コクトー

わたしの耳は貝のから

海の響きをなつかしむ


三好達治

海よ、

僕らの使ふ文字では、

お前の中に母がゐる。

そして母よ、

仏蘭西人の言葉では、

あなたの中に海がある

(「郷愁」、詩集『測量船』より)


webより

[mère/メール]コレが「母」

[mer/メール]これは「海」