そこへ行く

そこへ行くのは失意ノ方ではないのか

おもしろいことを云ふなぁ

それに君はカラマーゾフの兄弟をもう読んだか

なんて、

突然聞かれても困る


松がもうとれて新しい年が始まった

もう、あそこでも、

ここでも、

みんな人は歩きだしてゐる

突然TELが鳴って

それでわたしの在り処が分かって仕舞った


出ておいでよと

慰めがちに

齢たけた女ばっかりが集まるからって

そんな愉快なことはあるまい

行くよ、行くよ。

ぼくはどんなにしても行くよ。

嬉しくって、たまらない

もう何十年かぶりに会うんだから

僕だって元気になる


カラマーゾフなんて遠い昔のことで

あの本には世界のすべてのことが書かれているが

渾身の、わたしは失意ノ方で

世界は、あゝ、

痛苦に満ちているなぁ

とTELを閉じる


倉石智證