普遍的な人間精神に連なることを望んでいた

そのために山に入り林を彷徨い

熊の糞をそのテリトリーに探そうとした

熊除けの鈴を一生懸命に鳴らした

一方で、栗の毬まりの爆ぜる音や

小動物の足音を消した足音に耳をそばだてた

倒木に生えてくる茸の微かな音を聞き逃すまいとした


おおくの眼に見えないコロボックルの行ひは

何十万回の内のたった1回に過ぎない

もう、飛びついてしまったのだから後は知らない

大きな青い森を従えて

無数の種子のやうに飛び立って行くだらう


山間は紅葉とカラマツ林と杉林で埋め尽くされている

あゝ、息が詰まる

ようやく森から解放された時はほっとした

楢や柏の木の幹のごつごつした感じが未だ手の平に残っている

歩きはじめて

何か懐かしい共同体に向かって歩いてゐるやうな気分になった


倉石智證