■フランツ・マルク「青い馬」シリーズ


どの画家にもどの音楽家にも

色彩があって

恋に彩られていて

頑なな時代があって

戦争へとはいってゆく

平穏なドアの内と外では空気も

咲くバラの花も匂いも

まったく違うのだ

それをてこずらせた


青い空に、青い太陽の下に駈け上がる

蒼い馬の群れを描かうとするのだから

所詮、多くの日々の努力や勤めは水泡に帰して

信仰がどのやうに昂じやうとも

よっぽどのことがない限り

青い馬などゐやうがない

だがみんなわけもなく高揚して熱中していた

どの村にも教会の尖塔が望楼に立ち

やがて境界の向うからただならぬ砲声の音が届きはじめる


Sの付近ではいつも古くからの痕跡が残ってゐる

つまり人を殺したり、殺されたりしたからだ

巨石には沁みついた人の影がある


倉石智證

マルクはもっと絵を描きたかった二ちがいなかった。

願いはむなしく、

1916,3/4マルクはフランス・ヴェルダンで戦死した。

「青騎士」の仲間だったパウル・クレーが訃報を知ったのは、

同月11日のことだった。

あまりに運命的だったのは、

ちょうどこの日にクレーがドイツ軍の徴兵を受けたことだ。