秋の日は河原ばかりの小石があって
河原ばかりの扉を開けて
河原ばかりにひっそり入ると
薄の穂ばかりか鰯雲が無数に空に貼りついて
秋の日は薄ばかりの河原にあって
薄ばかりの扉を開けて
いそいそと景色に入れば
どこもかしこも
るるる、るるると
邯鄲の声が
わたしを攫ふ
背をまるめて石に眠れば
胃の腑のあたりに陽の色のまどかに色付き
うすく眼を開けて辺りを見回す
あゝ、
世間と、雲と、薄の穂と
まるでかうしてはいられない
るるる、るるると誘ひはするが
そこにはなく、あたしが
放恣に
秋の日は河原ばかりの小石があって
虫の音と、薄の穂と、鰯雲と
眠りから覚めてやっと
とば口に
花野から帰るころには私は妙に素直になっていた
倉石智證
