みんなさみしい王様なのだから
こんな日には
一枚の白い布でも干して
空でも見上げてゐやうか
カマキリが遊びに来る
みんなさみしい王様なのだから
輿にでも乗って、しずしずと野分の朝を行ってみようか
露に翅を濡らしたトンボが草の葉につかまってゐる
みんなみんな、じきに冬が来るぞ
草の葉叢から青ガエルが飛び跳ねて
みんなみんなもうじき寒くなるぞ
蟋蟀こほろぎやら飛蝗ばったやら
一斉に畑から引き揚げてゆく
地面がすこし蒼褪めて
里芋の葉が透明な宝石のやうな露を転がす
季節と季節の境目がかさこそと微かな音を立てて
しのびやかに何かが立ち去ってゆく
そっと、わたしは足を踏み入れる
そっとその鋭角の角を曲がると
しずしずと輿を回して
みんなみんな
大ぜいが山の方に向かって歩いて行った
倉石智證