おいでよ

また来たのかい

けふは空が高いね

蟷螂の斧とは、よく云ったものだ


P は軒を出るとき

胸の苦しさを打ち明けた

雲が西から東に流れる

心底、片思ひとはつらいなあ

水がつつつっと襟を流れ

負けは負けなんだと諦める

しかし、どうして I はあんなに色々なことが平気なんだらう

わたしは間もなく孕むことになるが

それは O には打ち明けない

神さまが証明しやうもないことなんだから

ずっと、ずっと昔からそこにあった

まるでこの世のへその緒みたいに、中心に

そして、みんながそこを我がものにしやうとする


わたしが孕むんだからそれでいいね

雲が西から東に流れてゆく間に

そんなこともあった

胸の苦しさは募るばかりだ

くやしい、と云ふのではない

ただ、一緒にゐたいのだ

それがさびしい


蟷螂の斧とはよく云ったね

けふはあんなにも空が高い

青く晴れてゐてそれがおまへにほんたうによく似合ふ

斧をふりあげて

なにもかもが思ふやうにはいかないが

けふは陽が落ちて、月が出たら

カマキリ、お前のその振りあげた姿を

月に飾ってあげやう


倉石智證