■あゝ、あの右端に子どもがゐる。
(14,8,30日経)「イスラム国」
シリア北部ラッカの空軍基地を政権側部隊から奪取した過激派「イスラム国」とされる集団
あんな小さな子どももいる=AP
秋が地球の軌道に冷へて来て
わたしはしたゝかに酔ふ
しかし、わたしの頭はいまだに夏のトマトだ
一切合財に賑やかで
わたしはわたしの線路に引きこもる
わたしの視線のとほくには少年がゐて
あゝ、なんと云ふとほい存在の姿なのか
子ども、が
佇立して
すぐに銃をとるのか
すでにあの青空を憎むのか
もう、コーランを誦んで
一切を眼の端から追い払ふ
銃床は冷え切って
でも、無垢は無垢だ
血が好きになるなんて
まるで中世にでも戻ったみたいではないか
学校にも行かずにコーランを誦んで過ごす
砂漠の民になって星を見て暮らす
いや、世界はバラバラになって仕舞ったから
世界をもはや比喩では語られなくなって
下二段活用でも、上二段活用でも
しまいにはみんな命令形になる
立て、歩け、働け
そして戦え、と
愛の形容ではなく手榴弾とラジオを渡される
わたしは、わたしの線路から出てゆく
しかし、永遠に交差することはないと思ふ
秋が地球の軌道に冷へて来て
どこかで銃声が鳴る
トマトが空に吹きこぼれる
銃を子守歌にして
さうではない
歴史を学ぶとは理性を学ぶことでなかったのか
少年が佇立する
かあさん、
そんなにがなり立てないでよ
あゝ、内臓が出ちゃう
倉石智證
