オレンジ冷ゑてゐます

の隣り脇を通ってそっちへ行かうとしたら

富久タワーが私を引きとめた

もう40階建てくらいに聳える

オレンジはいらんかねって

オレンジはいらない

花園公園には虫がすごく鳴いてゐて

所在ない若者が3人、ボールを蹴ってゐる

うま久はどうしてる

ビールが250円でけふはあやにくの貸し切り

わたしは流れ流れて新宿御苑の方に

やあ、昔ながらのうまさうな匂いだ


ベイビーってね

呼ばないでよ

それにスカートが短すぎる

think song、

think song、

帽子が頭にズレル

さあ、行かうかあの店に

タトゥーはご愛敬で足首に隠す

おいらたちは二丁目でけふものりのりで元気だ

ただオクラの花は黄色でやたら少し育ち過ぎた

セセリちゃうだいよ、よく焼いてね

煙りが目に沁みる、やはり少し悲しい


think song、

think song、

少しやはり悲しい

腕を大げさに振ってソルトを花のやうにかける

そこが腕の見せ所だが

まだ宵は始まったばかり

この界隈ではあの人も死んで、あの人の面影も薄れる

あゝ、みんなどこへ行ったのかと

地下水道へと寂しく流れた

みんな病気になるなよ、みんな病気になるなよ

愛はそんなにもムツカシイ

私のsexはどうすんのよと

モーナは激しく泣いて紀伊国屋の方に走る

富久タワーはあんなに高くなって

高さはみんな幸せなんだ

わたしはそのことを知らないから犬のやうに歩く

犬はまるで立ち止まって見たか、

幸せのその高さを


まるで、

まるで、

まるで、

100軒ほどのお店屋さんの奥で

1000人ほどの人がめまぐるしく働いてゐる

せせりちゃうだいよ、よく焼いてね

あゝ、煙りが目に沁みる

とても心地よく

カウンターが長く伸びてまるでその先を行くやうだ

虫が玄関先に鳴いて

すぐに秋が来る

モーナがカウンターの先からやっと帰って来る

まるで笑いながら


倉石智證