厳格なカノンを好む

厳格なカノンを上がる

梯子を使へ

梯子の下の微笑

緑の塔である

そして、枯れ木や枯れ草の匂いまでする


古びた長いスカートだ

兵士はその下で生き延びた

そのカビ臭い少し懐かしい匂ひを嗅いで

カノンは渦を巻いて塔屋へ

さらにその上へと突きぬけて

やっと、安らふ


厳格なカノンが好きだ

梯子を地面の透明な下へと降ろす

人っ子一人ゐなくて

そこでは絵以外はみな死だ

歩くより先から

鳴り響く


今では梯子を外された塔屋が

無用に、あんなにも高いとは

all along the watching tower

行って戦へと云ふ

主婦はスーパーで買い物をしてゐる


倉石智證