凡庸な水だ

ミジンコは水面のアメンボウを従へて

アメンボウは空の雲を見上げる

アメンボウは考える

「僕の学問はどうしやう」

アメンボウは悲しいのだ


故知らずその間

ミジンコは何度も宙返りを打った

凡庸な水だ


四十九日が過ぎたのだから

もう、自由でいいわけだ

さうかうするうちに

水はどんどん池に干上がっていった

じゆうでいられるうちにと

アメンボウはミジンコを見捨てて

そっと水面を蹴って空に飛んだ


けふも青い空に雲が浮かぶ

水面に雲と空が映るが

ミジンコはいまもそのことは知らない


倉石智證