女の子は遅れると云ふのです

田舎のバスの坂道で

では、どうしていたんでせう

先生は慌てて日影から女の子を引きずりだし

一目散に女の子の家を目指して走りだします


ひとしきりそんなこともあって

胸の動悸が収まったからと

鞄から宿題帳を出して手渡しました

そっと開いて見ると

お花がぺっしゃんこになって挟まってゐて

かすかな香りと一緒に

好きだよと

風が微かに横から吹いて行ったのです


パスがやうやく下の方からやって来ます

もうあたりは何処をみまわしても

日影と云う日影はありませんでした


倉石智證