■6/5久里洋二さん「石の花」

ぼくにはどうしても雲に見える。


えっと、ほらね

なんだっけ

雲のことだか、花のことだか

だめだね、歩きながらのことだから

三半規管がいやいやをする


眼の奥のことだから、目ん玉の裏の

桿体かんたい細胞とか錐体すいたい細胞とか

なにしろ色にまつわるものは不思議だ

あのひとはきっとDr なのだ

風景と色をどこからか探し出して来て

そして、そのことをすぐに忘れる


見て、

目の当りにしていることと

脳の裏側に張り付いているものは違うのだ

だから、雲は天才で気にしない

花の奥に潜む記憶や

さらに蘂しべを遡る地球の起源については

まったく、想像するしかないんだ


で、またなんだっけ

妻に云われるまではお箸が止まったままなのに気がつかない

石の花を摘まんで

浮かぶ雲を摘まんで

ひとぉつ、ふたぁつ、みぃーっつ

気が付くと、

雲の影を楽しむ


倉石智證