眠りの理由を探しにシャングリラに行った
蔓バラの激しい慟哭
折からの横殴りの雨に蔓枝を撓らせて
それからが新しい言語だ
通り雨のごとくにすぐに晴れて
富久のロータリーの下
人々は何事もなかったかのやうに歩く
高層マンションが立ちあがりつつある
クレーンの腕がみな同じ方角に向き
今、眩しく雨の雫をたらす
何千と云ふ人たちがここに住むのだ
かうして新しい言語を得て、蔓バラの
人々の頭上に緑の葉叢とともに輝きだし
振り返ればあゝ、あそこにコンビニと牛丼屋とステーキハウスが
もう何十年も昔からあるかのごとく
ぽっちりと目覚めて軒を寄せ合ひ
蔓バラの慟哭
棘が肌を傷つける
何組もの恋愛が行き過ぎ
金魚屋が店仕舞いをした
あれら水槽の懐かしき仕草
つたなき泡が天上へと上がり行き
過去も現在も
みな薔薇の見つめて来たものだ
うれしきものはみな過ぎて
そして過去へと
後ろ髪惹かれる思ひで
あゝ、蔓バラ、いつもの慟哭のあと
ひとしきり静まりかへり
わたしは眠りの理由を探しに
会計事務所の帰りに
富久のロータリーにふと佇み
豆腐屋の喇叭に耳を澄ます
蔓バラの赤い眠りに
Shangri-La
あくがれ出る
倉石智證
決算───
会計事務所の帰り。