まるで、此処なのだ

まるで、あそこなのだ

指し示す処、なのだ

無関係ではいられないのだ

真っ白な紙なのだ

無造作に線が引かれ

鉛筆の線なのだ


あそこへ行け、と云ふのだ

ここまで来てね

と云ふのだ

春は晴れて

ほんたうに気持ちよく

風は緑にさやぎ

影と笑い声をペーブメントに落とす


余白を歩いてみる

まるで青年のやうなのだ

まるで、少女のやうなのだ

文庫本を投げ出して、もうタブレットにする

知らない人にお手紙を出す


表参道へ───

青年はやがて余白に老ひて

やはり、ボールペンと真っ白な紙なのだ

地図を描いて

まるで、ここなのだ

まるであそこなのだ

むかし、行ったことあるよ

力いっぱい勢いよく描いて

鋲で柱に止める


倉石智證