雪害の桜の枝をもらって帰った

大きな枝ごとどうっと雪の中に埋もれ落ちて

その枝の先の方が道のなかに突き出ていた

指ほどの太さの枝を何本か折って持ち帰って

ヴェランダのバケツに水を張って枝を置いておいた


ずいぶん日にちが経って

東京の気候も温まり

頑なな芽たちも急にほころんで来たかと思ったら

4/25(金)ほぼ満開になった。

ところで、花たちは自分たちの枝には根っ子がない、

と云うことを知ってゐるのだらうか。

それを妻に聞いてみたら

知るわけがない

と妻は答えた。

でも、一生懸命咲いてゐる。

先行きが無い、

と云ふことに対して

でもどうしてこんなにも頑張れるのだらうか

気候が流れる───


シンドラーのリストのテーマが流れる。

ユリア・リプニツカヤ(15)の横顔がアップに映しだされる。

あゝ、ここにも一瞬、民族の運命のやうな表情が醸される。

広大なユーラシア大陸にしても、

いずれ民族の激しい長い混交の歴史にほかならない。

人は物語する。

そこには思いがけず、

悲哀と歓喜が入り混じった複雑な表情が醸し出されるのだ。


溺愛された船だ

船倉ではモノが醗酵して酸っぱくなってゆく

溺愛された弦楽器だ

この甘たるい調べにのせて

事実はそれとは少しずつ異なり

口にされた事柄はそこいらに落ちて静かにしてゐる


気分に流れず

感情に流されず

ドネツク辺りでは緑流れる

あゝ、こんなにもう緑の季節になったと云ふのに

ドネツクでは緑の野砲

兵を積むトラックがすごいスピードで行く

兵士に、緑流れる

市民が笑ふ


倉石智證