■剪定した葡萄の蔓の枝先に吊り下げておくと、
あっという間に樹液が溜まった。
ご婦人の化粧水にするとよいと云ふことだが、
義兄はこれを焼酎に足していただいていた。
不思議な生きてゐるやうな味わいがする。
しきりに、花が咲き
しきりに、風がさやぐ
目の前でゆるゆると君子蘭が花開き
目の前で幾千もの紫モクレンの花が花辯を
ゆゆるゆゆるにおしひろげてゆく
モンシロチョウは菜の花畑の畝にあらわれ
畝を飛び越え、飛び越えしてやってくる
しきりに、風がさやぎ
気が付くと野良坊菜の丈は膝上の辺りまで育ち
あの辺りではしきりに
庭の隅に牡丹の花芽が薄赤く色を増し
春は、性行為
ぼくは彼女を壁に押し付けてしてしまった
おびただしく水が溢れる
葡萄の新芽の蔓を断ち切り
透明なカップを吊り下げる
しきりに、樹液は溢れ
この広大な葡萄畑で
悪意ある視線はなにひとつとしてない
いま、宇宙が稠密ちょうみつに動きはじめ
この肯んじない植物のすべては
生きている
あゝ、限りなく生きてゐるのだ
しきりに、花が咲き
しきりに、風がさやぐ
モンシロチョウは、畝を飛び越え飛び越えしてやって来て
薔薇の木に新しい棘がぎっちしと逆立ちを為す
しきりに・・・
倉石智證
