精巧な

最高のお品をお届けいたします

ようこそ、クリミアへ

少し不便ですけれど

もうすぐ春が来ますから

お茶でも召しあがって行って下さい


犬を連れた奥さんですか

知ってゐますよ

つくづくと心が感動しました

心が乱れました

そして、いったいどこへと迷い込んだんでせう

ちぐはぐなことになりましたね

はっきり云ってフリブナからルーブルになりますよ

お給料はざっと3倍です

一応議会には提出してみます

慎重に、

心をこめて、

丁寧に、


突然、文章に無い崇高な思ひに駆られるのです

もう戦争へは行かないと決めましたから

ヘルメットは船の上に置いてきますね

忘れたまんまにしておいてください

赤ん坊がいま眼を覚ましたやうです

プーチンの顔がくしゃくしゃになって

聞こえますか

どこかで水が流れる音が

深い石の陰影の奥です

門を潜る

そこから先は未知だ


倉石智證

1898年にチェーホフはヤルタに家を建て、

翌1899年に同地に移り住んだ。

ここで短編小説「犬を連れた奥さん」などを執筆した。


(論説副委員長 池田元博14,3/30日経より引用)

男はロシアとして、

若い人妻はクリミアとして───


男は中年の家族持ち。

恋多き性格だが、男女の関係の苦い結末は、嫌というほど経験した。

2倍近くも年が離れた若い人妻との保養地での出会いも、

最初は退屈しのぎの軽い気持ちだった。

ひとときの熱狂と別離。

二度と会うことはないと思っていたのに、追憶は募るばかり。

意を決してはるばる人妻に会いに行くと、彼女も男のことばかりを考えていた。

再び始まったあいびき。

どうすれば人目をしのばず、人に嘘をつかないですむのか。

もう少しの辛抱で解決策がみつかると思いつつ、

まだ複雑で困難な道の始まりだと自覚せざるを得ない――。

広々とした大空、山の頂にかかる白い雲、不思議な光をたたえた海……。

「よくよく考えてみれば、究極のところこの世の一切はなんと美しいのだろう」

(神西清訳)