薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク

ナニゴトノ
不思議ナケレト・・・


ある人はそのやうにして

一日何十回も何百回も薔薇の花木を飛び越へる

空気は撹拌されていってねっとりと透明になるのだった

なが~い午後があって

もう村人とは挨拶も交わさない

脚長蜂が翔ぶ

濃赤色に深々と包まれて

天鵞絨(びろうど)のやうに

それは間違いなく新しい冒険なのだった


そこにまた見も知らぬ日月をおびき出そうとして

薔薇の木の陰に

誰かがそっと覗き見ているやうな気配がして


倉石智證

(北原白秋)

薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク

ナニゴトノ不思議ナケレト