いつものキャベツの前で腕組みをし

夜の夜中に瞑想する

スプーンとフォークは飾りだが

ハンマーと鎌を撃ち付けたら星が飛び出た

ウラジミールは草原によろめき出る


いいんだね、それでいいんだね

どうしても行くのかへ

出て行くんだね

わたしたちはここにゐる


来た時もさうだが

腐海の浅瀬を氷を割って来たものだが

また、この寒い氷を割って泥を漕いで渡る

庁舎では給料が4倍に上がるんだ

ワーニャは茹で卵を慌てて飲み込む

ドーミトリーはひっきりなしに電報を打った


あゝ、またスターリンと云ふ亡霊が地を彷徨ってゐる

猜疑と、告発と、怠惰だ

不安が寒さのやうに募って来る

逃げ出すバスの中で涙ぐむのは

年端もゆかない女の子たちだった

ついですぐおばあちゃんたちも涙ぐんだ


コハイノハ ジユウデハナク 国家デス

銃を手に皮ジャンのウラジミールさへ

こんなことに確たる心証があるわけでもない

青い瞳に五芒星が輝き出す

ウラジミールってばしかし

こんなことをゲームのやうに楽しんでいる


今夜もまるまるのキャベツの前で腕組みをし

スプーンとフォークは飾りだが

ロシアの古い昔に戻ったかのやうに

槌と鎌を撃ち付けて

青い瞳に五芒星が輝き出し

するとなんだか隣りの五星紅旗もこっそりと輝き出し


倉石智證