先生はいつこんなきれいな可愛い脚を見たんでせう

もう隠さなくてもいいんですか

塔屋のやうに高く伸びて

清潔にすべすべしてゐて

とり付くしまもない


あの上にいつも雲が湧いて

そして、足早に行く

別にとりたてて急ぎの用事があるわけではないんですよ

話をするたびに上の塔屋の辺りにきれいな虹が懸かる

ほんたうですね

信頼し合うなんて

愛があるなんて、こんな素晴らしいことはない


それなのに先生ってばいつも独り占めにして

部屋の中を歩かせる

椅子に腰かけさせる

時にテーブルの上にまでポーズを取らせたりして

油断もない

ちゃっかりと最後は壁に立たせて

悦に入ってゐる


よくあることなんですよ

胴から上の部分がすっぽり無いなんてことが

吃驚するやうなことではありません

お空の上に置き忘れる

あるいはまだ階上裏でくずぐずしてゐる

話して見ればすぐに穏やかなのに

あゝ、なにを焦って意気込んで

やっぱり若過ぎるってさうなんですね


脚がプイッて拗ねて

それもなんとも可愛いのですが

しかし、もう時間です

背中のピンクの螺子ねぢが切れて

発条ぜんまい仕掛けは可哀いさうに

そちらに行きかけては止まる

何か云ひたげで、物欲しさうで


使用済みのマネキンの長く伸びたきれいな脚を

長方形の箱にしっかり詰めて

春先の閑なあなたにでも送ろうかと思ふ


倉石智證

口唇の笹緑する遊技らのふと手を伸ばす「深川の雪」(智笑)

遊技らは27人。

深川の遊郭に雪が降って。

松と竹叢に雪が白く積もり。

遊技の白い手がほっそりとそれに差し伸べられる。

遊技らの口唇の上は紅に、下唇は笹緑に塗られ、

江戸の1800ころの不思議なお洒落。

喜多川歌麿の肉筆画の大作「深川の雪」が見付かる。

(14,3/2NHKニュース)