■久里洋二さん「猫と花」

(絵は語る)飽きもせず、疲れてると、猫の絵を描きはじめる。

ふかふかのお菓子

空に浮かぶ桃色のふかふかのお菓子


Aのまどろみ

Aの微笑み

Aの偽熱

窓辺にあってその胸は息づいてゐる


わたしは飛び込んでみやうかとも思ふ

わたしはこの花をたれかにあげたい

わたしは伝へたいのだ

わたしは愛されたい


空に浮かぶ桃色のふかふかのお菓子

砂糖菓子が溶けて崩れて

Aがすぐそこにゐるのは知ってゐるよ


瓶にお手紙を入れて流すのだ

いつかたれかの心の岸辺に着きますやうにって

ネコ、みゃー、みゃー

わたしは愛されたい

わたしはふかふかで机の端の上にゐる

やがて瓶に入ったお手紙がわたしの元へ届く

夢の机の岸辺に届く


倉石智證