どうも肩がすーすーするな
と思ったら
おばあちゃんから電話があった
おじいちゃんが立たんやうなった
とうとう、立たんやうなった
日向ぼこしてゝね、さあ、と思ったら
もう、自分では立たん
慌てて畑にツトムさん呼びに行って
ようやっとベッドに運び込んだ
赤い侘助、咲いた
白い侘助、咲いた
侘助、お猪口に咲いて
星斑ほしふに覚める
縁側のガラス戸の向うに侘助が咲いて
蘂あたゝかく、有楽うらくに誘ふ
じいさまは椅子に腰かけ
夢見は身の外へ
ガラス戸の外へ
庭先の端々に
おじいちゃんが立たんやうなった
ついに
とうとう食べるのもベッドになるね
お便所にも、立たん
襁褓のお世話になるんだね
ほんたうにかうやって
一つずつ返していって
赤ん坊のやうになって
ほんたうなんだね
赤い侘助、咲いた
白い侘助、咲いた
侘助、お猪口に咲いて
星斑に覚める
侘助を、摘まん
じいさまはもうベッドの中でうとうととしてゐる
蘂あたゝかく、夢は有楽を駆けめぐる
みんな人はどこへ行ったか知らんが
しーんとして
赤い侘助を摘んでそこに置けば
あゝ、さすがにどっと泣けてくる
倉石智證
