■久里洋二さん「Yシャツの中から春」

(絵は語る)真冬に寒い絵なんて、心が震えあがっちゃうよ。

だから今日から春の絵を。


戦争は終わりました

少年は校庭に出て三角ベースをやりました

夢中になって、宿題を忘れました

廊下や教室の雑巾がけのとき

さぼって女の子を追いかけまはして

からかいました

先生に見つかり怒られました

「バケツを持って廊下に立っていなさい」


みんな教室に入って勉強してゐるとき

少年だけが静かな長い廊下に立っています

もう少しでお昼の時間

少年の身体は背中の方から冷へて

首からうへは先ほどから

ずっと校庭の向かうの方にとんで行って

かはりに

白い古びた開襟シャツからは

青い、紫がった花が咲きます


みんな黙ってますけれど

戦争は終わりました

そのことがうれしくてなりません


倉石智證