あの人だかりは何だ
詩人、なんだって
詩人が歩いてゆくよ
大変だね、見てごらん、足がない
きっと靴を履き忘れたんだ
靴なんて気にならないんだ
結局、靴下も履いてゐない
毛糸の靴下を上げたいね
いや踝も隠す皮の靴もだ
雑踏を行くとき
あゝ、なんであの人の脚はあんなに透明になるんだらう
大股で行く
ほんたうに困ってゐる人のところへ
足早に行く
ほんたうに愛が必要な人のところへ
ほっぺただけはやたらに赤い
まるい大きな赤鼻も撫でる癖があって
詩人ばかりは痩せてなんかいない
詩人ばかりはどちらかと云ふと肥っていて
それにもかかわらず少し陽気で
英語ばかりか、全部の言葉を話す
X'masになった
街中の鐘が鳴り響く
村といふ村の鐘が次へと鳴り響き
羊飼いたちは驚き眼を見開く
あんなに大きな荷物を背負っているのは
きっと何かを配るためであり
足がもはや透明なのも
いや、その人の脚がもはや人眼に見えないのも
はやくはやく空を駈けて
森や丘を過ぎて
いっときでも早くあの子たちの
あの子供たちの夢の中に下りて
すべての子供たちに欠けることのない
物語や、お話や、空想や、ひょっとすると無邪気な願い事も
それらを一つずつ色とりどりに包んで
さあ、早くと───
天駈けるサンタさんは一心にさう思ってゐる
詩人の作法として
まだ一言もしゃべってないが
誰か雑踏の中に、
すれ違ふ人の中に
街を行くサンタさんを見たか(?)
倉石智證