ええ、あん肝は如何かな

ええ、鮟鱇の肝は

身に沁みて、この寒い冬空に

海の底ゐに

身に沁みて、髭を震わす


鮟鱇の肝はつるりと身から出て

まな板のうへに

つるりと取り出され

塩水に浸し

筋を取り

酒、塩、醤油、味の素にまた漬けて


あゝ、見た眼に悪しく

可愛げのなく

可哀さうに、つるりと肝

取り出され

妻の手は厳しい外科医のやうで

まな板の上でやさしく声を掛け


肝太き、

冬空に確かに海の底ゐで脂肪肝になって

あまつさへ

ええ、あん肝は如何かな

ええ、鮟鱇の肝は

アルミホイルに巻いて、蒸して

ああそれからお皿に分けて切って

飾り、

ポン酢で、いただく


鮟鱇の捨つるとこなき


倉石智證